連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」第2章4節(その1)
新企画連載
希望の明日へ
―個別具体の中のリアルな真実―
第2章 人間復活の「菜園家族」構想
4 地球温暖化と「菜園家族」(その1)
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連載「希望の明日へ―個別具体の中のリアルな真実―」
第2章 人間復活の「菜園家族」構想
4 地球温暖化と「菜園家族」(その1)
(PDF:531KB、A4用紙11枚分)
まえおき
2023年11月30日から、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにおいて、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が開催されています。
12月1日にはじまった首脳級会合で、国連のグテーレス事務総長は、各国の温暖化対策について強い危機感を露わにし、「今行動すれば、最悪の混沌を回避できる技術はある。リーダーシップと協力、政治的意思が今、必要だ」と強調。温室効果ガスの削減目標の引き上げを求めました。
会合には、世界から約140ヵ国の首脳級が参加。温室効果ガス排出量で世界1、2位の中国の習近平国家主席と、アメリカのバイデン大統領は参加しませんでした。
世界は、気温上昇を産業革命前よりも1.5℃に抑える目標をめざしています。そのためには、2030年までに温室効果ガスの排出を2019年比で43%下げる必要がありますが、現状の各国の削減目標を達成したとしても、2%減にとどまる見通しです。その結果、今世紀末の気温上昇は約3℃に達するといいます。
この日、公表された文書のたたき台では、「化石燃料や石炭の段階的削減や廃止」「再生可能エネルギーの3倍増」などが盛り込まれましたが、それも曲折が予想されるという何とも頼りない状況です。
COP28 にあわせて、12月2日、米エネルギー省は、「世界全体の原発の設備容量を2050年までに3倍に増やす」との宣言を発表。日本を含む22ヵ国が賛同しました。
今日の社会・経済システムのあり方から目を逸らし、相も変わらず科学技術の進展とその利用にのみ過剰に期待する世界、とりわけ先進諸大国の温暖化対策の根底にある思想そのものの危うさを指摘せざるをえません。科学技術によってすべてが解決できるとする思い上がった経済成長至上主義に抗して、今こそ新たなパラダイムのもとに、気候変動問題を根本から見直す時に来ているのではないでしょうか。
今週と来週の2回にわたって掲載する4節「地球温暖化と『菜園家族』」(その1)、(その2)の原文は、2011年3・11東日本大震災・福島原発過酷事故が起こる前の2008年、「原子力ルネサンス」の風潮のさなかに書かれたものです。地球温暖化問題をどう捉え、克服していくのかについて、今日の私たち自身の生産と暮らしのあり方、さらには21世紀の未来社会構想との連関のもとに提起した、初期段階の論考に当たるものです。
気候変動対策をめぐる議論がますます混迷を深める今、この問題を根源的、包括的に考える上での原点として、あらためてお読みいただければと思います。