<呼びかけ>主権者たる国民の覚悟 ―「戦争法案」衆院強行採決の日に ―
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主権者たる国民の覚悟 ―「戦争法案」衆院強行採決の日に―
(2015年7月16日付、PDF:185KB、A4用紙3枚分)
<呼びかけ>
主権者たる国民の覚悟
―「戦争法案」衆院強行採決の日に ―
小貫 雅男
伊藤 恵子
強行採決しても
「いずれ国民は忘れる」
人を見下す
この国の政治
安倍政権のこの思い上がりを
主権者たる国民は決して忘れない
国民の異論に耳を傾けようともせず、疑問に答えることなく、2015年7月16日安倍政権は、「安全保障関連11法案」を一つに束ねて、一気に衆院本会議にて強行採決した。
国際舞台では、厚かましくも「自由と民主主義の価値観を共有するパートナー」などと嘯き、嘘と欺瞞に充ち満ちた実にこざかしい手口を弄して、ファッショ的暴挙を敢行したのである。
民意を無視し、説明責任を回避し、根拠のないまま、国民の命運を分ける重大問題を勝手に決める。それは、土壇場になって真相が露呈した2020年東京オリンピックの新国立競技場問題にしても、国民の声を踏みにじる原発関連行政やTPP問題、さらには強権をもってごり押しする沖縄の辺野古米軍新基地建設問題にも通底する特徴だ。
であるからこそなおのこと、「陸海空軍その他の戦力」の不保持を明確に規定したはずの憲法第9条に違反し、歴代権力が戦後一貫して国民を欺き、実に巧妙に積み重ねてきた既成事実に馴らされることは、もはや許されないのである。
私たちは、日本国憲法第9条を今一度、愚直なまでに誠実に読み返そうではないか。初心に立ち返り、戦争の問題、生と死の問題、そして誠実に生きるとは何かを、根源的にとことん考えぬこうではないか。
<日本国憲法>
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
② 前項の目的を達するために、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
たとえ為政者が、どんなに屁理屈を並べ立て、勝手気ままに振る舞おうとも、諦めてはならない。主権者たる国民の本当の出番は、これからはじまるのだ。
一方で、私たちは、こうした蛮行をやすやすと許してきた私たち自身の弱さにも、同時に厳しく冷静に目を向けていく必要があるのではないか。
思えば、今私たちが享受している民主主義は、先人たちの長き苦闘によって勝ち得たものであった。しかし、戦後長きにわたって、あまりにも「選挙」だけに矮小化した「お任せ民主主義」に甘んじ、それでよしとしてきたのではなかったのか。このことは同時に、生産と生活の現場における私たち民衆自身の主体性と創意性の劣化を招き、民主主義の原点とも言うべき草の根の民主主義の衰退と、これを基礎におく「議会」をはじめ民主的諸制度の空洞化を極限にまで進めることになったのではなかったのか。
私たちが、主権者たる国民の本当の出番を望むのであれば、長期的に見て、民主主義の衰退を招いたその根っこにある原因を、まずしっかりと確認しておく必要があろう。その上で、私たち自身の民衆的運動の新たなあり方を同時に模索していかなければならない。
そのためにはまず、この国のあるべき未来のかたちを探究し、めざす方向をしっかりと見定めておくことであろう。そして民衆運動の具体的課題を、この新たな未来への「長期展望」のもと、私たち自身の暮らしのあるべき姿に一つひとつ引き寄せ、照らし合わせ、検証していくことではないか。
この「長期展望」とは、とりもなおさず、新たなる時代にふさわしい、大地に根ざした人間復活の未来構想、すなわち「菜園家族」基調の自然循環型共生社会※ になるはずだ。
とりわけ今日直面している具体的な課題である「戦争と平和」の問題についても、まさにこうした私たち民衆自らの創意による新たな未来構想のもとに、日本国憲法第9条の条文に則して、正々堂々と軍事費をはじめ無駄な巨大事業費を削減し、それを国民がもっとも必要としている育児・教育・医療・介護・年金など社会保障や、特に若年層の雇用対策、そして文化・芸術・スポーツの振興に振り向けていく。さらには、この自然循環型共生社会への壮大な長期展望のもとに、具体的には、抗市場免疫型の家族づくり、地域づくり、国づくりの人的・物的基盤の整備・育成のための財源にまわしていく。
こうした中で、憲法第9条に明らかに違反する自衛隊を、災害大国・日本にふさわしい、防災の任務に特化した世界に類を見ない優れた「防災隊」(仮称)※※ に発展的に解消・再編していく。この具体的提案を大胆かつ積極的に提示しつつ、国民とともにこの国の未来のあるべき姿を考えぬき、希望の明日に向かって進んでいくのである。
まさにこのような未来志向の積極的姿勢と理念のもとに、日本国憲法第9条を世界のすべての人々に向かって、それこそもう一度、高らかに再宣言しようではないか。互いに敵意を持っていがみ合うのではなく、国境や民族の垣根を越えて、すべての人々との友愛と連帯を表明する。これこそが、わが国のみならず世界の平和に寄与する、まことの積極的平和主義ではないのか。
戦後長きにわたって積み重ねられてきた違憲の既成事実によって、後退に後退を余儀なくされ、いつかしか原点からあまりにもかけ離れた、理念なき些末な議論の隘路に陥り、混迷を重ねてきた今日の事態をすっきり清算する。そして、ごまかしのない、この確固たる平和主義のもとに、新たな世界へと再出発していくのである。
戦後70年のこの節目の年、諦めてはならない。「戦争法案」衆院本会議強行採決のこの日を起点にはじまる新たな民衆の闘いの高まり中で、世界に誇る日本国憲法の「平和主義」、「基本的人権(生存権を含む)の尊重」、「主権在民」のこの三原則の精神は、やがて人々の日常普段の暮らしの中に深く溶け込み、血となり肉となっていくにちがいない。
本年3月27日、当方里山研究庵Nomadホームページに、小文「『菜園家族』的平和主義の構築 ―憎悪と暴力の連鎖をどう断ち切るか―」(小貫・伊藤、PDFファイル、A4用紙10枚分)を掲載した。「戦争法案」衆院本会議強行採決の新たな段階をむかえた今、この小文が何らかの積極的な意味を持ち、ひとつのささやかな問題提起になればと願っている。再読・再吟味を乞う。
※ 詳しくは、小文「『菜園家族』基調の『自然(じねん)社会』への展望 ―資本主義の超克は不可能なのか―」(小貫・伊藤、2015 年5月21日、里山研究庵Nomadホームページに掲載、PDFファイル、A4用紙8枚分)の項目 「菜園家族」構想の基本となる考え(2~3頁) および 希望的観測と現実とのはざまで(3頁) を参照されたい。
※※ 詳しくは、上記小文「『菜園家族』的平和主義の構築 ―憎悪と暴力の連鎖をどう断ち切るか―」(2015年3月27日、里山研究庵Nomadホームページに掲載)の項目 憲法第9条の精神を生かす新たな提案 ―自衛隊の漸次解消と「防災隊」(仮称)への統合・再編(7~8頁) を参照されたい。
2015年7月16日
―「戦争法案」衆院本会議強行採決の日に―
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