新企画シリーズ “21世紀の未来社会―世界的複合危機、混迷の時代を生きる―” のホームページ連載にあたって

 猛暑も過ぎ去り、いよいよ読書の秋。
 来たる10月初旬より、新企画シリーズ “21世紀の未来社会 ―世界的複合危機、混迷の時代を生きる―”(全13章、小貫雅男・伊藤恵子)を当里山研究庵Nomadホームページに、1週間ごとに各章順次、連載していきます。
 ご友人の方々にもおすすめいただければ嬉しいです。
 この新企画シリーズのスタートにあたって、筆者からの ≪メッセージ≫ ≪目次一覧≫を以下に掲載いたします。

葉っぱと木の実

≪メッセージ≫

ここに、生きる喜びの泉あり
――闇夜をつんざく未来への閃光
 大地に託す民衆の熱き思い
 若き新時代の鼓動が聞こえてくる――

事もあろうに、選りによって
世界に誇る日本国憲法を憎しみの最たる標的に
戦後一貫して民主主義を蔑ろにし、切り崩し
軍国日本の復活を狡猾にも強行してきた
歴代の自民党政権
図らずも安倍元首相銃撃事件によって
その歴史の真相とその根の深さが
一気に白日の下に曝け出された。

旧統一教会と自民党政権との深くて醜い因縁
背後で蠢く超大国の無気味な黒い影
底知れぬ恐るべき深い闇
果てには国民を欺き、そそくさと国葬を強行する
どこまで堕落すれば気が済むというのであろうか
あまりにも政治にウソが多すぎる。

平和と民主主義、基本的人権を土台から踏みにじり
事ここに至っても平然とうそぶき逃れ
恥とも思わぬ国会議員・地方議員たちの群れ
戦後長きにわたって築かれてきた
政・官・財の鉄のトライアングル
この忌まわしい権力構造に媚びへつらい
報道倫理をかなぐり捨てたマスメディアの憂うべき現実
まさにそこにこの国の政治の腐敗と危機
闇に隠された真実をまざまざと見る思いがする。

戦後77年間、そんな政治を私たちはなぜ許してきたのか
今、悔恨の念をもって
自分自身の問題として深く心に刻み
自らの生きる道を根源的に問い直したい
徹底して考え抜きたい。

欲望と敵愾心にまみれ
澱みきったこの世に代わって
草の根の私たち一人ひとりがまことの主体となる
そんな新しい社会とは一体何かを
とことん語り合いたい
そして、未来への確かな希望を胸に
一歩一歩、着実に踏み出して行こう
まさにここにこそ
21世紀を生きる新たな喜びの泉がある。

敗戦直後の空腹と貧窮の中、群馬の地で結成された高崎市民オーケストラ。幾多の試練に直面しつつも、子供たちや人々の心に響く、生の美しい音楽を届けたいという理想を胸に、山奥の小学校やハンセン病療養所などを巡回しながら、地方交響楽団へと成長していく。生き生きとした草創期の実話をもとに制作された映画『ここに泉あり』(監督 今井 正、中央映画 製作、独立映画 配給、1955年)を顧みつつ、今日の日本と私たちの未来に思いを馳せる。

       ――― ◇ ◇ ―――

フクロウ2

新企画シリーズ “21世紀の未来社会 ―世界的複合危機、混迷の時代を生きる―”(全13章)

≪目次一覧≫

プロローグ (1)
 混迷の21世紀世界
 『イワンのばか』、直耕に込められたトルストイの深い思想
 今こそ民衆の創意と連帯による21世紀の未来社会を

第一章 菜園家族の世界―記憶に甦る原風景から― (13)
  甦る大地の記憶
   心ひたす未来への予感

 1 ふるさと ―土の匂い、人の温もり―
 2 やがてきっと甦るものづくりの心、ものづくりの技
 3 土が育むもの ―素朴で強靱にして繊細な心―

第二章 まずは、わが国社会の積年の構造的矛盾と破綻の自覚から (33)
 ―苦悶の闇を引き裂く未来への閃光―

 1 顕在化した日本社会の積年の矛盾
   過剰の中の貧困 ―いのち削り、心病む、終わりなき市場競争
   もう忘れたのであろうか「8050」問題
   近代の落とし子「賃金労働者」は、果たして人間の永遠不変の社会的生存形態なのか

 2 生命本位史観に立脚し「家族」と「地域」の再生を探る
   いのちの再生産とモノの再生産の「二つの輪」が重なる家族が消えた
   高度経済成長以前のわが国の暮らし ―かつての森と海を結ぶ流域地域圏
   森から平野へ移行する暮らしの場

 3 歪められ修復不能に陥ったこの国のかたち
   「家族」と「地域」衰退のメカニズム ―干からびた細胞
   再生への鍵 ―「家族」と「地域」を基軸に

 4 機能不全に陥った近代経済学と末期重症の資本主義
   近代を超えて新たな地平へ
   新古典派から抜け出たケインズ理論
   経済の金融化と新自由主義、マネタリズムの登場
   暴走するマネー経済と疲弊する実体経済、なかんずく地域社会
   近代経済学を超えて、「地域生態学」的理念と方法を基軸に21世紀の未来社会論を

 5 人類の歴史を貫く民衆の根源的思想
   近代に先立って現れた民衆の自然権的共産主義の先駆的思想
   人類の歴史は民衆の心に根ざす自然権的思潮の終わりのない「否定の否定」の弁証法

第三章 今こそ近代のパラダイムを転換する (69)
 未踏の思考領域に活路を探る
 人間の新たな社会的生存形態「菜園家族」が21世紀社会のあり方を根底から変える
 自然界の生成・進化を貫く「適応・調整」の原理と人間社会
 自然法則の現れとしての生命
 自然界と人間社会を貫く生成・進化の普遍的原理と21世紀未来社会

第四章 人間そして家族、その奇跡の歴史の根源に迫る (87)
 1 まずは「家族」とは何かを考える前に
   「家族」の評価をめぐる歴史的事情

 2 人間の個体発生の過程に生物進化の壮大なドラマが
   母胎の中につくられた絶妙な「自然」
   人間に特有な「家族」誕生の契機

 3 「家族」がもつ根源的な意義
   人間に特有な「道具」の発達が人類史を大きく塗り替えた
   「家族」はこれからも人間が人間であるために根源的な役割を果たし続ける

第五章 19世紀未来社会論のアウフヘーベン (103)
 ―自然と人間社会の全一体的検証による―

 1 21世紀未来社会論の核心に「地域生態学」的理念と方法をしっかり据える
 2 21世紀の今日にふさわしい新たな歴史観の探究を

第六章 あらためて考える21世紀の未来社会 (111)
 ―自然界の生命進化の奥深い秩序に連動し、展開―

 1 21世紀の「菜園家族」社会構想 ―「地域生態学」的理念とその方法を基軸に―
   生産手段の分離から「再結合」の道へ ―「自然への回帰と止揚(レボリューション)」の歴史思想
   「菜園家族」社会構想の理念とその歴史的意義
   週休(2+α)日制の「菜園家族」型ワークシェアリング
   世界に類例を見ないCFP複合社会 ―史上はじめての試み
   CFP複合社会の特質
   森と海を結ぶ流域地域圏 ―「菜園家族」を育むゆりかご

 2 草の根民主主義熟成の土壌、地域協同組織体「なりわいとも」の生成・展開
   ―「地域生態学」的アプローチ―

 3 「菜園家族」じねんネットワークと21世紀労働運動の革新
   農地とワークの一体的シェアリング ―公的「農地バンク」、その果たす役割
   労働運動に「菜園家族」の新しい風を ―21世紀の労働運動と私たち自身のライフスタイル

 4 家族小経営の歴史性と生命力

第七章 「匠商家族」と地方中核都市の形成 ―都市と農村の共進化― (151)
 非農業基盤の家族小経営 ―「匠商家族」
 「匠商家族」とその地域協同組織体「なりわいとも」
 「なりわいとも」と森と海を結ぶ流域地域圏の中核都市の形成
 「なりわいとも」の歴史的性格とその意義
 前近代の基盤の上に築く新たな「協同の思想」

第八章 世界的複合危機の時代を生きる (169)
 ―避けては通れない社会システムの根源的大転換―
 ――CO2排出量削減の営為が即、古い社会(資本主義)自体の胎内で次代の新しい芽(「菜園家族」)の創出・育成へと自動的に連動するCSSK社会メカニズムの提起――

 1 気候変動とパンデミック、そしてウクライナ戦争は、果たして人間社会の進化にとってまことの試練となり得るのか

 2 今日の地球温暖化対策の限界と避けては通れない社会システムの根源的転換
   今日までに到達した気候変動に関する世界の科学的知見から
   今日の地球温暖化対策に欠けているもの、それは社会システムとライフスタイルの根源的転換の思想
   「菜園家族」の創出は、地球温暖化を食い止める究極の鍵
   原発のない脱炭素の自然循環型共生社会(FP複合社会)へ導く究極のCSSKメカニズム
   CSSKメカニズムのもと、CFP複合社会への移行と進展を促す

 3 CSSK特定財源による彩り豊かな国土と民衆の生活世界の再生
   CSSK特定財源による人間本位の新たなる公共的事業と地域再生
   CSSKメカニズムに秘められた近代超克の意外にも高次のポテンシャル

 4 露わになったこの国社会の構造的矛盾、その根源に迫るCSSKメカニズム
   新型コロナウイルスがもたらした社会経済的衝撃、その真相と本質
   パンデミックが浮き彫りにした近代特有の賃金労働者の脆弱性と非人道性
   CSSKメカニズムの円滑かつ着実な駆動が21世紀の新しい時代を創る
   21世紀、広範な国民運動の新たな土台となる「菜園家族」じねんネットワーク
   明けぬ闇夜はない

第九章 「菜園家族」の台頭と異次元の新たな科学技術体系の生成・進化の可能性 (205)
 ―資本の自然遡行的分散過程との関連で―

 資本の自己増殖運動と科学技術
 資本の従属的地位に転落した科学技術、それがもたらしたもの
 GDPの内実を問う ―経済成長至上主義への疑問
 「菜園家族」の創出と資本の自然遡行的分散過程
 異次元の新たな科学技術体系の生成・進化と未来社会

第十章 「菜園家族」を土台に築く近代超克の円熟した先進福祉大国 (221)
 ―高次の新たな社会保障制度を探る―

 1 原理レベルから考える「自助、共助、公助」
 2 「家族」に固有の機能の喪失とこの国破綻の根源的原因
 3 「家族」に固有の福祉機能の復活と「菜園家族」を土台に築く高次社会保障制度
 4 近代超克の円熟した先進福祉大国への可能性
 5 円熟した先進福祉大国をめざす新たな国民運動形成の素地
   「家族」と「地域」の再生は、果たして不可能なのか
   「家族」と「地域」の再生をゆるやかな変化の中で捉える ―諦念から希望へ
   「お任せ民主主義」を排し、何よりも自らの主体性の確立を ―そこにこそ生きる喜びがある

第十一章 「菜園家族的平和主義」の構築 (249)
 ―いのちの思想を現実の世界へ―

 1 いのち軽視、いのち侮辱の「戦争俗論」の跳梁跋扈を憂える
   ―卑劣な企み「マッチポンプ」の繰り返し―
   憎しみと暴力の坩堝(るつぼ)と化した世界 ―世界の構造的不条理への反旗
   日本国憲法の平和主義、その具現化の確かな道を求めて ―「菜園家族的平和主義」の構築

 2 今断罪されるべきは、長きにわたる姑息な解釈改憲による既成事実の積み重ねそのもの
   アベノミクス主導の解釈改憲強行の歴史的暴挙
   あらためて日本国憲法を素直に読みたい
   アベノミクス「積極的平和主義」の内実たるや
   「自衛」の名の下に戦った沖縄戦の結末は

 3 非同盟・中立の自然循環型共生の暮らしと平和の国づくり
   憲法第九条の精神を生かす新たな提案 ―自衛隊の戦力なき「防災隊」(仮称)への発展的解消
   非戦・平和構築の千里の道も一歩から
   非戦・平和の運動に大地に根ざした新しい風を

 4 東アジア世界を視座に未来へ
   あまりにも片寄った情報の氾濫の中で考える ―朝鮮半島情勢をめぐって
   核兵器禁止条約発効と世界各国民衆との連帯
   戦後77年、もう一度初心にかえり世界の人々に呼びかけよう

第十二章 高次自然社会への道 ―本書の概括にかえて― (279)

  19世紀未来社会論のアウフヘーベン
  止揚・熟成・・・そして根源からの大転換
     「菜園家族」基調のCFP複合社会を経て
    人間復活の高次自然社会へ
  世界に誇る日本国憲法具現化の究極の道

 1 CFP複合社会から自然循環型共生社会(FP複合社会)を経て高次自然社会へ
   CFP複合社会の展開過程とその特質 ―究極において労働を芸術に高める
   未来社会を身近に引き寄せる「セクターC、F、P相互の対立と依存の展開過程」
   形骸化した民主主義の現状と「生産手段の再結合」
   より高次のFP複合社会における生産手段の所有形態をめぐって
   克服したい研究姿勢の弱点

 2 人類史を貫く「否定の否定」の弁証法
   人間社会の生成・進化を律する原理を自然界の「適応・調整」の原理(=自己組織化)に戻す
   自然への回帰と止揚(レボリューション)、これこそが民衆の本源的な歴史思想である
   自然観と社会観の分離を排し、両者合一の思想を社会変革のすべての基礎におく
   混迷の時代だからこそ見失ってはならない未来社会への展望、そしてゆるぎない確信

第十三章 夜明けを告げる伝統と革新の「東アジア世界」 (303)
  ――今やわが国のみならず東アジアの民衆にとって
    自己の主体性の確立は、避けては通れない共通の急務――

   現代中国の女性作家・梁鴻(リアン・ホン)の作品が投げかけるもの

 1 東アジアの民衆にとって決して避けては通れない共通の課題
   欲望の多元的覇権抗争に対峙する東アジア民衆のまことの連帯と生活世界

 2 日本国憲法のもとではじめて甦る「未発の可能性」としての小国主義

 3 世界に誇る日本国憲法の理念こそ、東アジア民衆連帯の要

エピローグ (323)
 わが国の混迷と閉塞打開への発端 ―大学の荒廃と再生
 夜明けの歌

あとがきにかえて (330)

       ――― ◇ ◇ ―――

2022年9月10日
里山研究庵Nomad
小貫雅男・伊藤恵子

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